お口全体のバランスを考えた補綴治療
― ジルコニアと金属床義歯を用いた症例 ―
今回は、複数の歯の治療と、上下の部分入れ歯の作製を行った症例をご紹介します。
歯科医院で治療を受けるとき、「痛い歯を治してほしい」「悪くなった歯を抜いてほしい」というように、気になる部分だけに目が向きやすいと思います。
しかし、歯を失ったり、複数の歯に問題が生じたりした場合には、1本の歯だけではなく、残っている歯や噛み合わせ、見た目、そして今後どのようにお口を使っていくかまで考えて治療することが大切です。
今回の症例では、上顎の奥歯の補綴物をゴールドからジルコニアへ変更するとともに、状態の悪い歯の抜歯を行い、最終的に上下顎の部分床義歯を金属床義歯へ変更しました。
Before

After

今回の症例では、主に以下のような治療を行いました。
● 上顎大臼歯のゴールドブリッジをジルコニアクラウンへ変更
● 唇側への傾斜が大きかった上顎前歯に対する処置
● 下顎大臼歯のFMC(全部鋳造冠)が装着された歯の抜歯
● 上下顎の部分床義歯を金属床義歯へ変更
一見すると、それぞれ別々の治療に見えるかもしれません。
しかし、歯を失った部分をどのように補うのか、残っている歯にどのような負担がかかるのかなどを考えると、お口全体を一つの単位として治療を考えることが重要になります。
ここからは、今回使用された材料や治療について分かりやすくご紹介します。
ゴールドのブリッジからジルコニアへ
まず、上顎の奥歯に装着されていたゴールドのブリッジを、ジルコニアを用いた補綴物へ変更しました。
「ゴールドの歯は悪いの?」と思われる方もいるかもしれません。
実は、ゴールドは歯科治療において長く使用されてきた材料です。強度や加工性、適合性などの面でメリットがあり、現在でも治療に用いられています。
一方で、金色の見た目が気になるという方もいらっしゃいます。
そこで選択肢の一つとなるのがジルコニアです。
ジルコニアは白く、天然歯に近い見た目を再現しやすい歯科材料です。また、強度にも優れているため、前歯だけではなく奥歯の補綴物にも使用されています。
「できるだけ自然な見た目にしたい」
という患者さんにとって、ジルコニアは選択肢の一つとなります。
ただし、ジルコニアにも種類があり、すべてのケースに適しているわけではありません。
歯の位置や噛み合わせ、残っている歯の状態などを考慮し、適した材料を選択する必要があります。
状態の悪い歯は、すべて残せるとは限りません。
今回の症例では、上顎前歯や下顎大臼歯についても処置を行っています。
歯科治療では、できる限り自分の歯を残すことが基本的な考え方の一つです。
しかし、むし歯や歯周病などによって歯の状態が大きく悪化している場合、歯を残すことが難しいケースもあります。
また、歯の位置や傾きなどによって、今後の補綴治療や噛み合わせに大きな影響を与えることもあります。
そのような場合には、無理に歯を残すのではなく、抜歯を行ったうえで、その後の欠損を入れ歯などで補うという治療が選択されることがあります。
歯を抜くことは患者さんにとって大きな決断です。
そのため、「なぜ抜歯が必要なのか」「抜歯した後はどうするのか」まで含めて治療計画を考えることが重要です。
保険の入れ歯と金属床義歯の違い
今回の症例でもう一つの大きなポイントとなるのが、上下顎の部分床義歯を金属床義歯へ変更したことです。
「金属床義歯って普通の入れ歯と何が違うの?」
と疑問に思われる方も多いのではないでしょうか。
部分入れ歯にはさまざまな種類がありますが、代表的な違いを簡単にまとめると以下のようになります。
| レジン床義歯 | 金属床 | |
| 主な材料 | レジン(樹脂) | 金属+レジン |
| 床の厚み | 比較的厚くなりやすい | 薄く設計しやすい |
| 強度 | ○ | ◎ |
| 熱の伝わりやすさ | △ | ◎ |
| 違和感 | 厚みにより感じることがある | 薄くすることで軽減が期待できる |
| 費用 | 保険適用 | 自費診療 |
※実際の厚みや装着感などは、義歯の設計やお口の状態によって異なります。
金属床義歯のメリット
金属床義歯の大きな特徴の一つが、薄く、丈夫な義歯を作りやすいことです。
入れ歯は、ある程度の強度を持たせる必要があります。
樹脂だけで強度を確保しようとすると、設計によってはある程度の厚みが必要になります。
一方、金属は樹脂よりも強度が高いため、金属の強さを利用することで、義歯床を薄く設計しやすくなります。
入れ歯の厚みが気になる方にとっては、これは大きなメリットです。
入れ歯を装着すると、
「舌が動かしにくい」
「しゃべりにくい」
「口の中に何か入っている感じがする」
といった違和感を覚えることがあります。
もちろん、金属床にすれば必ず違和感がなくなるわけではありません。
しかし、できるだけ薄く設計することで、違和感を軽減できる可能性があります。
さらに、金属は熱を伝えやすいという特徴があります。
そのため、食事の際に温かいものや冷たいものの温度を感じやすいことも、金属床義歯のメリットの一つです。
保険の入れ歯が悪いわけではありません
ここで注意したいのが、「金属床義歯のほうが優れているから、保険の入れ歯は良くない」ということではないという点です。
保険の入れ歯には、費用を抑えて治療を受けられるという大きなメリットがあります。
一方、自費診療の金属床義歯では、材料や設計の選択肢が広がり、薄さや装着感などにこだわった義歯を検討しやすくなります。
どちらにもメリットとデメリットがあります。
そのため、入れ歯を選ぶ際には、
「費用を重視したい」
「できるだけ違和感を少なくしたい」
「薄い入れ歯にしたい」
「食事をより快適に楽しみたい」
など、ご自身が何を大切にしたいのかを考えることが重要です。
お口全体を考えて治療するということ
今回の症例では、ゴールドブリッジからジルコニアへの変更、状態の悪い歯への処置、そして上下の金属床義歯の作製を行いました。
このように複数の歯に問題がある場合、1本ずつの歯だけを見るのではなく、残っている歯、失った歯、噛み合わせ、補綴物、入れ歯などを含めてお口全体を考えることが大切です。
歯を失ったからといって、「入れ歯を入れれば終わり」というわけではありません。
残っている歯をできるだけ長く使うためにも、入れ歯をどのように設計するか、どの歯に負担をかけるのか、といったことまで考える必要があります。
また、治療方法にはそれぞれメリット・デメリットがあります。
だからこそ、患者さんのお口の状態だけでなく、生活スタイルや希望、費用なども含めて治療方法を選択することが重要です。
まとめ
今回の症例では、見た目や機能だけでなく、今後もお口の中をできるだけ良い状態で維持していくことを考え、複数の補綴治療を行いました。
ジルコニアには、自然な見た目や高い強度といった特徴があります。
また、金属床義歯には、金属の強度を利用して薄く設計しやすいことや、熱を伝えやすいことなどのメリットがあります。
ただし、どの材料や治療方法が適しているかは、患者さんのお口の状態によって異なります。
「入れ歯の厚みが気になる」
「入れ歯の違和感を減らしたい」
「治療した歯の見た目が気になる」
「歯を抜いた後、どんな治療ができるのか知りたい」
このようなお悩みがありましたら、ぜひ一度ご相談ください。
患者さん一人ひとりのお口の状態やご希望に合わせて、より良い治療方法を一緒に考えていきます。
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